令和の虎|【クロコ】企業防衛というもう一つの正義。採用の未来を変える挑戦【後編】

令和の虎 令和の虎まとめ

事業の正義か危険か。虎たちが下す決断とは?

前編では、志願者・クロコによって提案された“ブラック人材対策システム”の構想が語られ、虎たちはその社会的意義とリスクに強い関心を示した。問題社員によって企業が被害を受ける現実を背景に、企業が自衛手段を持つことの必要性は確かに感じられた。

しかし同時に、その取り組みが持つ倫理的・法的なグレーゾーンには慎重論も多く、虎たちは一様に「この事業に出資することで、逆に“加害者側”として社会に誤解されるのではないか」との懸念を口にする。
果たしてクロコの熱意とビジョンは、虎たちの懸念を超えて評価されるのか。そしてこの仕組みは、社会に受け入れられる“新しい採用インフラ”として成立しうるのか。

後編では、より具体的な事業の進行状況、パートナー企業の有無、社会的影響に関する議論が交わされ、虎たちの最終的な判断が下される。

クロコの進捗報告――既に動き始めている“実証実験”

虎たちから最初に問われたのは「この事業が本当に現実に近づいているのか?」という点である。
クロコは即答した。「既にテスト企業2社との間で、システムの一部機能を使った実証が進行している」と。

その内訳は、退職者データと社内人事評価との相関をAIが解析し、離職の予兆や内部の不協和音を早期に察知する仕組みである。社内でハラスメントを引き起こしていた人材の行動パターンや発言傾向を数値化し、社内評価システムと連動させることで“問題社員の傾向”を可視化する試みだ。

この仕組みによって、該当社員の退職後に新たな採用が行われた際、同様の傾向を持つ応募者が検出されたという。クロコは「これはスクリーニングではなく、採用判断の参考情報にすぎない」と何度も強調した。

虎たちの中には、「そこまで現場でテストしているなら、説得力がある」と評価を上げる者もいれば、「その仕組み自体がグレー過ぎて、導入をためらう企業が多いのではないか」と警戒心を崩さない者もいた。

倫理と実利のはざまで。虎たちの本音がぶつかり合う

本事業の本質的な論点は、“倫理の壁”をどう超えるかである。虎たちの議論は白熱し、やがて「これは便利な仕組みだが、人権侵害の温床になりかねない」という本質的な懸念が噴出した。

岩井は「これは加害者情報の共有ネットワークにも見える。社会に受け入れられるのか?」と疑問を呈し、hamuも「結局、問題の本質は企業側の“人を見る目”の未熟さにもある。システムに任せすぎると逆に人間の目が鈍る」と危惧した。

それに対しクロコは、毅然とした態度で反論する。「私たちは“人を裁く”のではなく、“リスクを予測する”だけである。人の採用は最終的には人が決める。だが今の採用現場では、嘘やごまかしを見抜く術がなさすぎる」。

さらに、「現場の人事担当者たちは、口では理想を語るが、実際には“問題社員”に怯えて採用を躊躇している現実がある。私はそれを変えたい」と熱弁。虎たちはその覚悟と情熱に、改めて耳を傾け始めた。

投資家としてのリスク評価と、事業の未来性

議論の終盤、テーマは「出資判断」に移る。
虎たちは、ビジネスモデル自体には収益化の可能性を見出しつつも、「出資することが自らのブランドにどう影響するか?」という視点で慎重な姿勢を見せた。

特にブランド系・SNS系の虎は、「誤解を受ける余地があるサービスは怖い」と明言し、出資には至らない意向を示す。しかし、ビジネスとしての“目のつけどころ”については「面白い」と一貫して高評価であった。

一方、社会貢献性を重視する虎からは「今後このような問題はより深刻化するだろうし、採用における“真偽の精度”を高める方向性は絶対に必要だ」と賛同の声が上がる。

クロコは、「この事業を通じて、企業も従業員も“真面目な人が報われる社会”に変えていきたい。それが私のミッションだ」と語り、最後までぶれることのない信念を貫いた。

そして最終的に、事業の革新性と社会的インパクトを見込んだ1人の虎が、一部金額での出資を申し出るという展開に。完全ALLではなかったが、クロコの挑戦は確かな一歩を踏み出すこととなった。

誰を守るのか――企業防衛という“もうひとつの正義”

【後編】では、志願者・クロコが「企業もまた被害者であり、守られるべき存在である」と訴える理由が明確になった。
これまで語られることの少なかった「ブラックな社員による組織破壊」という現実に対し、データとAIを使って防衛線を張ろうとする彼の試みは、決して感情論だけではなかった。

倫理とビジネスのはざまで虎たちが揺れる中でも、クロコは一貫して「信頼される社会インフラをつくる」ことにこだわり、その道を歩もうとしていた。その姿勢が一部の虎に届き、賛同という形で結実したことは、今後の希望につながるだろう。

社会が人を守るなら、企業や現場で働く人々もまた守られなければならない。クロコの挑戦は、採用の未来において新たな常識を築こうとする“逆転の正義”だった。

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