山尾志桜里氏が国政復帰を表明 過去の疑惑と真摯に向き合う姿勢を強調
元衆議院議員の山尾志桜里氏(50)は、2025年7月の参議院選挙比例代表に国民民主党から立候補する意向を表明し、6月10日に国会内で記者会見を行った。会見には約80人の報道関係者が集まり、約2時間半にわたって山尾氏の過去の政治活動にまつわる問題や、出馬の経緯について説明がなされた。
会見の冒頭、山尾氏はまず、自身の政治家としての過去を振り返り、「現職時代において多くの至らなさがあったことを深く反省している」と述べた。そして、「再起を目指すにあたって、改めて国民の信頼を得られるよう全力で努力したい」と意欲を語った。
今回の出馬については、国民民主党の玉木雄一郎代表から直接の打診があったことを明かし、「もう一度戻って一緒にやろうという言葉に心を動かされた」と語った。また、自身が関与してきた憲法改正に関する論点整理を、2025年の政治日程に合わせてアップデートすることが自身の「最も大きな仕事である」とした。
国政復帰への道を歩み出す山尾氏だが、その歩みには過去の疑惑が影を落としている。会見ではそれら一つひとつに対して真摯に向き合う姿勢が見られた。
不倫報道や不正経費問題に釈明 「未熟さ」を認め再出発を誓う
会見ではまず、2017年に報じられた男性との不倫疑惑について問われた。山尾氏は「当時から申し上げている通り、そのような事実はない」とあらためて否定した。一方で、現在では当該の人物との間に私的・公的な交流は一切ないと説明した。
続いて、政治資金に関連する「ガソリン代不正支出」の問題に関しても言及。これは、当時の秘書がガソリンスタンドに残されていた他人のプリペイドカードの領収書を流用し、事務所の経費として精算していたという不正行為である。山尾氏は「秘書による独断の行動であり、自分自身は一切関与していない」と主張。そのうえで、「不正に気付けなかった監督責任は極めて重い」と述べ、強く反省の意を示した。
さらに、国会議員に交付される「議員パス」の私的利用についても問われた。この件について山尾氏は、「移動の際に私的な用事を済ませていたことは事実である」と認めた上で、「本来であれば、もっと誠実かつ明確に説明し、謝罪すべきであった。対応の甘さがあったことを悔いている」と、謝罪の不十分さも含めて過去の行動を悔いた。
会見では「8年前の自分には驕りがあった」と自己分析を行い、「政治家としても人間としても未熟であった」と述べた。その上で、今回の出馬は単なる再挑戦ではなく、「過去の過ちと向き合い、成長した姿で国民に応えたい」という決意の表れであると語った。
支持者の反応や党内の立場にも配慮 山尾氏の姿勢に変化も
国民民主党が山尾氏の擁立を正式に発表したのは5月14日である。発表直後から、SNSなどを中心に一部の支持者や有権者から疑問や批判の声が上がった。これについて山尾氏は「自分が発表されたことにより、党の支持率に一定の影響があったことは事実として受け止めている」と率直に認めた。ただし、「出馬を断念するという気持ちには至らなかった」と語り、批判を受けながらも前に進む覚悟を示した。
また、皇位継承に関する見解を過去にSNSなどで発信していた点について問われると、「この場で個人的な見解を述べるのは控えたい」としたうえで、「党としての方針が決まった以上、それに従うのは当然である」と述べ、党内での組織的立場を優先する姿勢を見せた。過去のように個人の見解を積極的に発信していた姿とは異なり、党内調和を重視する方向へとスタンスを転換しているように見える。
山尾氏の会見は、玉木代表や榛葉幹事長の助言により開催されたもので、出馬表明とあわせて、過去にくすぶっていた疑念を払拭する狙いがあった。ただし、完全に火消しに成功したとは言い難く、疑惑の説明が不十分と受け取る向きもある。
それでも山尾氏は、政治家として再び信頼を取り戻すために、「これまでの過ちを糧にして、自らを変えていく覚悟がある」と力強く語った。かつて厳しい批判にさらされた経験を経て、いかに新たな政治家像を築けるかが、今後の山尾氏の成否を左右することになるだろう。
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